2011年5月17日火曜日

読書メモ 『佐藤可士和の超整理術』(日本経済新聞出版社 佐藤可士和著)

 先週から少しずつ読んでいた本の感想です。佐藤可士和の超整理術

『佐藤可士和の超整理術』
(日本経済新聞出版社 佐藤可士和著)

 ユニクロやNTTドコモ「N702iD」などのクリエイティブな仕事をしてきた著者の思考回路を「整理」し、言語化した内容です。
 アートディレクター・クリエイティブディレクターというと、「一瞬の閃き」で仕事をしていうイメージがありますが、そのギャップに驚きました。

 「情報整理と問題解決は別の次元の作業ではなく、同じベクトルでつながっている」

が、それを端的に表しているを思います。

 「整理は新しいアイデアを開く扉です」

 学会発表のネタを考えたり、その内容の焦点を絞ったり、新たな企画や提起を考案する際に、自分の思考を明らかにするのに試してみたいと思います。
 自分たちの医療・医療機関の活動を客観的に評価し、「強み」を理解し、広く公にする場合に役に立ちそうな技術と思います。

1」 空間の整理
 ・定期的にアップデートする。
 ・モノの位置を決め、使用後はすぐに戻す。
 ・フレームを決めてフォーマットを統一する。

2」 情報の整理
 ・視点を引いて客観視する。
 ・自分の思い込みを捨てる。
 ・視点を転換し、多面的に見てみる。

3」 思考の整理
 ・自分や相手の考えを言語化してみる。;「無意識の意識化」
 ・仮説を立てて、恐れずに相手にぶつけてみる。
 ・他人事を自分事にして考えてみる。


「答えは必ず目の前にある!」

・視点を決定し(~がしたい!、~が何より大切!)、それを基準に、すでに把握している情報を整理するだけで、「一瞬の閃き」がなくとも大きな仕事ができそうです。
・思考の言語化→仮説を設定し、相手(時には自分)にぶつけ、潜在化した答えを導き出す。
 これは、コーチングの理論とも共通していると思います。

トレーニング方法として、
 相手の思いや考えを別の自分の言葉に置き換え、更にそれを相手にぶつけてみる。
 それを繰り返して、相手と自分が思考を明確にしながら共有する。

 ぜひ、医学生や研修医を相手に試してみたいと思いました。

2011年5月16日月曜日

火山ガスについて 八甲田登山

 5月14日(土)~15日(日)にかけて八甲田山に登山に行きました。
 あいにくの天候でしたが(5月の八甲田にも関わらず、山中で誰一人として出会いませんでした。)、久しぶりの八甲田の雪原を彷徨い、リフレッシュできました。
 行程は以下の通りでした。悪天のため、大岳の登頂は諦めましたが、視界も15M程度で、前日の足跡が僅かに残っていたため、辛うじて下山できたのも事実です。

行程
5月14日(土)
7:15 弘前発(JR)
8:00 新青森発(タクシー)
9:20 酸ヶ湯発
11:25 仙人岱ヒュッテ
12:40 大岳避難小屋
5月15日(日)
5:25 大岳避難小屋発
6:10 仙人岱ヒュッテ
7:25 酸ヶ湯

 地獄沢の火山ガスの臭いは相変わらずで、昨年死亡事故もあったことを思い出し、http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/disaster/406232
 火山ガスの対応について考えてみました。

 火山ガスのほとんどの成分は水蒸気(90%以上)ですが、残りのガス成分はフッ化水素(HF)、塩化水素(HC1)、二酸化イオウ(SO2)、硫化水素(H2S)、二酸化炭素(CO2)、窒素(N2)、水素(H2)、メタン(CH4)、アルゴン(Ar)などが含まれています。
 温度が低い火山ガス程、二酸化炭素や硫化水素が多く含まれるようです。
 危険なものは、下の3つです。

1」二酸化炭素(CO2)
 二酸化炭素は無色無臭で、気づきにくいだけに危険です。
 二酸化炭素は、濃度が濃くなると頭痛の症状が現れ、その後昏睡状態になります。
濃度5%:呼吸苦・頻呼吸、頭痛
濃度10%:数分~15分で昏睡状態、
濃度15~20%:数呼吸で昏睡状態
濃度が30~40%:即死
*これまでに10%のCO2濃度で1分、9%の濃度で5分で死亡したとの報告がある。

【ニュースVTR】
1)1997年7月12日に、八甲田田代岱で、訓練中に自衛隊員3名が犠牲になった事故は、二酸化炭素による中毒死と言われています。八甲田山北東に位置する八甲田温泉および田代平高原付近には二酸化炭素が放出されている窪地があることが確認されています。

2)世界で最も大きな火山ガス災害は、この二酸化炭素で起きました。1986年にアフリカのカメルーンで、火口にできた湖、ニオス湖の湖水に溶けていた二酸化炭素が、なんらかのきっかけで噴出して谷沿いに12キロも流れ下りました。時刻は夜の9時過ぎで多くの人が眠っていた上に、二酸化炭素が無色無臭のガスだったために、一つの村の人たちが丸ごと亡くなるなど、1700人以上の人が亡くなりました。

2」硫化水素(H2S)
 温泉地でよく感じられる臭いで、「卵が腐ったような」と表現されることがあります。濃くなってくると、非常に不快な感じになり、失神したり呼吸が麻痺したりします。
 危険濃度は500PPM以上で、致死量は1,000PPM以上。
 低濃度の場合は硫黄臭がありますが、高濃度になるに従い、人間の臭覚が犯され無臭に感じる特性があります。

【ニュースVTR】
1)2010年6月に、八甲田山の酸ヶ湯で、女子中学生が死亡した事故は、硫化水素によるもので、事故現場では許容の10倍の濃度の硫化水素が検出されたようです。
http://www.mutusinpou.co.jp/news/2011/02/15187.html

3」二酸化硫黄(SO2)
 非常に刺激性が強いガスです。喘息の持病があったり心臓が弱い人は、濃度が薄くても咳がひどくなったりして呼吸が困難になります。
 三宅島で噴出が続いているのが、二酸化硫黄です。

 そして最後に、
 治療より対策が重要です。注意が必要な状況(環境)を理解しておく必要があります。
1」天候
 風のない曇った日は注意が必要です。風がないとガスが拡散しにくく、濃度が濃くなりやすくなります。
 秒速10mほどの風が吹いていると、火山ガスの濃度はゼロに近くなることがわかっています。

2」地形 周囲より低くなった地形に注意が必要です。有毒な火山ガスは空気よりも重いために、窪地や谷間などの低い場所に溜まりやすい性質があります。
 したがって、そうした場所で頭が重くなったり、痛くなったりしたら、要注意です。

 調べてみて、「へぇ~」と思うことばかりでした。八甲田の火山ガスによる死亡事故は、1997年の事故と2010年の事故とでは、原因となる火山ガスが違うのですね。

参考
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/200/56565.html
http://www.bousaihaku.com/cgi-bin/hp/index2.cgi?ac1=B103&ac2=&ac3=5052&Page=hpd2_view

乳幼児の尿路感染症について

 今日は当直明けです。
 昨晩、10か月の急性腎盂腎炎のケースの入院がありました。
 Pediatricsに以下の論文が掲載されていたことを思い出し、目を通してみました。
Brady PW, Conway PH, Goudie A.Pediatrics. 2010;126:196-203.

【方法】
 対象は、6か月未満の尿路感染症の症例で、①静注治療期間:3日以内、②静注治療期間:4日以上、の2群に分けて後方視的コホート研究で検証。
 退院後30日以内の再入院を治療の失敗とした。
【結果】
 12333人がコホートの対象のうち、240人(1.9%)が30日以内に再入院となった。
 「静注抗菌薬:3日以内群」が1.6%、静注抗菌薬4日以上群が2.2%であった。両群で差はなかった。
 尿路奇形が存在する症例で、有意に治療の失敗となる症例が多かった。

 感想
0)そもそも30日以内に再燃する乳児例は非常に少ない。
1)短期間に再燃するかどうかは、抗菌薬の治療期間とは関係なさそう。
  →治療期間より、病状の重症度と尿路奇形の有無が重要。
2)今回の研究だけでは、静注治療期間と瘢痕形成の発生率の関係は評価できない。
  →従って、一律に3日以内で可、とも言い切れない。
  →静注抗菌薬の投与期間を検討するにあったては、アウトカムを腎の瘢痕化率にするほうが意
   味がありそう。
3)当院の急性腎盂腎炎のクリティカル・パスが6泊7日に設定していることは、改善の余地がありそう。
  →「治療までの発熱期間」「抗菌薬投与後の発熱期間(解熱までの期間)」「DMSA腎シンチ等の画像所見の有無」などを考慮して、決定するのが妥当か。
 
 下記の論文では、「抗菌薬内服単独群」と「短期静注+内服群」とでは瘢痕形成率に差はないとの結論のようです。
Antibiotics for acute pyelonephritis in children.

2011年5月11日水曜日

はじめまして

 私は現在、一般病院で小児科勤務医をしています。
 特にこれといった専門はありませんが、これからも専門に偏ることなく、こどもを中心に(時には大人も含めて)診療していこうと思います。
 現在、一般小児科学(というより診療)・小児救急医療・感染症診療・医学教育(特に研修医教育)決断分析科学・登山医学、に興味があります。
 ブログの開設は初めてになりますが、自分自身の知識の整理も兼ねて、続けていきたいと思います。