2011年5月16日月曜日

乳幼児の尿路感染症について

 今日は当直明けです。
 昨晩、10か月の急性腎盂腎炎のケースの入院がありました。
 Pediatricsに以下の論文が掲載されていたことを思い出し、目を通してみました。
Brady PW, Conway PH, Goudie A.Pediatrics. 2010;126:196-203.

【方法】
 対象は、6か月未満の尿路感染症の症例で、①静注治療期間:3日以内、②静注治療期間:4日以上、の2群に分けて後方視的コホート研究で検証。
 退院後30日以内の再入院を治療の失敗とした。
【結果】
 12333人がコホートの対象のうち、240人(1.9%)が30日以内に再入院となった。
 「静注抗菌薬:3日以内群」が1.6%、静注抗菌薬4日以上群が2.2%であった。両群で差はなかった。
 尿路奇形が存在する症例で、有意に治療の失敗となる症例が多かった。

 感想
0)そもそも30日以内に再燃する乳児例は非常に少ない。
1)短期間に再燃するかどうかは、抗菌薬の治療期間とは関係なさそう。
  →治療期間より、病状の重症度と尿路奇形の有無が重要。
2)今回の研究だけでは、静注治療期間と瘢痕形成の発生率の関係は評価できない。
  →従って、一律に3日以内で可、とも言い切れない。
  →静注抗菌薬の投与期間を検討するにあったては、アウトカムを腎の瘢痕化率にするほうが意
   味がありそう。
3)当院の急性腎盂腎炎のクリティカル・パスが6泊7日に設定していることは、改善の余地がありそう。
  →「治療までの発熱期間」「抗菌薬投与後の発熱期間(解熱までの期間)」「DMSA腎シンチ等の画像所見の有無」などを考慮して、決定するのが妥当か。
 
 下記の論文では、「抗菌薬内服単独群」と「短期静注+内服群」とでは瘢痕形成率に差はないとの結論のようです。
Antibiotics for acute pyelonephritis in children.

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