2011年6月13日月曜日

第25回日本小児救急医学会に参加しました。

 第25回日本小児救急医学会(2011年6月11日-11日 東京ドームホテル)に参加しました。
演題を準備していましたが、締切直前にキャンセルしたため、発表なしの参加でしたが、その分集中した学びができました。

 大きな学びは、以下の2点でしょう。
1」 脳死判定セミナー
2」 シンポジウム 小児の虐待:いかに気付き、いかに対応するか。

それぞれの内容については、ブログで改めて報告することとして、1」とも関連して(臓器提供施設としても必須)、やはり院内に虐待防止チームを立ち上げる必要があると感じました。

【やってみようと思ったこと】
1」 予定外点滴閉塞(事故抜去も含む)のまとめ
①事故抜去②閉塞③血管炎④折れ曲がり

2」 3歳以下の骨折症例のまとめ(救急外来と整形外科外来)
   → 受傷機転に関する検討や虐待との関連性について

3」 頭部打撲症例の検討
NICEガイドラインの活用、CTによる被曝の問題に対する家族の意識調査

4」 乳児の急性呼吸不全に対するNIVの検討
→装着2時間後の、心拍数、呼吸数、pCO2の評価が大切。百日咳の無呼吸に対する適応につ
いて。レスメド社製の幼児(infant)マスクを試してみたい。

5」 陽圧・陰圧体外式人工呼吸器(RTX);キュイラスの導入について 
→使用目的(基準):気道分泌物が多く、喀痰排出目的。酸素化不良があり、努力呼吸を伴う場
合。
喀痰排出:controle model:15-30分、1日2-3回
酸素化改善:continuous negative model 数時間~1日

【調べてみようと思ったこと】
1」 GBS全身感染症について
→ ①スクリーニングの方法(時期、検体の採取部位)について、②母体以外の水平感染につい
て、型によるリスクの違いについて

2」 フェノバルビタール静注製剤について
→①投与方法:10-20㎎/㎏、投与速度100㎎/分以下で 10分以上かけて投与
②ⅰ)てんかん重積・熱性けいれん重積の有効率:>80%、脳炎・脳症の有効率:46%
③血中濃度(μg/ml)=(-0.01×投与後時間+1.6)×投与量
    ④投与後効果のある症例は、10分で出てくる。

3」 新生児全身型ヘルペス感染症
→13%が肺炎で発症し、診断に難渋し、致死的である。
→全身状態の悪い新生児に対しては、早めにアシクロビルを検討したほうが良さそう。

4」 声門下血管腫に対する、プロプラノロールの有効性について 
→使用量 2mg/kg/日、
参考文献:① NEJM 2008;358:2649-2651、②PEDIATRICS2009;124:e423、③J. Ped
2010;156:335-
5」 胃短軸捻転症について
→CT所見は? CPA症例の報告もあり。
6」 ブタンガス吸入による、致死的不整脈について

7」 先天性気管狭窄症の診断について
→ 3D-CTの撮像方法について
8」 神経原性肺水腫の機序について

9」 呼吸障害を伴う重症筋無力症について
→ 眼瞼下垂を伴わない、重症例もある
10」 声帯機能不全(Vocal code dysfunction)について

11」 毒素性ショック症候群について

12」 銀杏中毒について

振り返ると、学びの多い学会でした。 
個別にあらためてまとめてみたいと思います。

エピペン講習会に参加しました。

 日本旅行医学会認定講習会・試験(2011年6月12日 発明会館・東京)内で開催された、エピペン講習会に参加しました。
なるほど!、と思った点を、メモのように残しておきます。

【使用量】
1」①体重30kg以上:0.3mg製剤、②体重15kg~30kg:0.15製剤
*体重15kg以下では「原則禁忌」となっていますが、ご家族と同意を得た上で、使用することは
許容されるでしょう。

【使用のタイミング】
H.Sampson (PEDIATRICS 2003;111:1601-1608)の食物によるアナフィラキシーの臨床重症度分類が参考になります。
マイラン製薬の方のスライドをそのまま、添付します。
Ⅲ度以上、すなわち咽頭喉頭の掻痒感や絞扼感、繰り返す嘔吐があれば適応とのことです。

【患者・ご家族への指導のポイント】
0」 太もも前外側に投与する。
1」 グーで握る。
2」 投与部位にしっかり固定してから、押さえつける。(振り下ろして投与しない。)
→押さえつけるとカチッと鳴って、同時に針と薬液が投与される。
3」 エピペンを離した時、針が出ていればOK。(1.7ml余る。)

*保存方法は、15°~30°で保存し、冷蔵庫や自動車のダッシュボードは避ける。

2011年6月7日火曜日

堤未果さん講演会 『「貧困大国アメリカ」から学ぶこと』

 私たちの病院で堤未果さんをお招きして、講演会が開かれました。
タイトルは、『「貧困大国アメリカ」から学ぶこと』でした。
あらゆるものが市場化された、その最終型がアメリカであること、絶対に日本をアメリカ化させてはいけないと感じさせる講演内容でした。
→ アメリカの現状(一部):ⅰ)7秒に1件が家を失っている。ⅱ)飢餓人口が5000万人。ⅲ)大学生の借金の平均322万円、医学生の借金の平均1500万円。

①戦争の自由化(民営化)、②食の自由化(民営化)、③医療の自由化(民営化)、④教育の自由化、について、自由化(民営化)してはいけない領域を自由化するとどうなるか、見えたような気がします。

堤さんの伝えたかった要旨について、自分なりの感じ方も交えてまとめると、以下の2点でしょう。

1」 市場化の問題点
①市場化(民営化)すると、それによって利潤を得た企業が、②マスコミ・③政治をカネでコントロールしようとするため、①市場化②マスコミ③政治、が癒着することが問題の本質で、福島原発問題で明るみになった、電力会社と政治・行政・マスコミの関係と同じでしょう。
→利益が第1に優先されるため、そこに人間の正義や良心などは入る余地がなくなる。(個人の力では修正することができなくなる。)



*小泉行政改革の時に叫ばれた、「民営化すると、サービスが向上し、選択枝が増える。」は、本質ではない。


2」 市場化と戦争政策が一体となる。
;日本の憲法9条だけ存在したとしても、25条がなければ(=貧困が存在すれば)若者は戦争に向かわざるを得ない。

①貧困が進む(貧困を作り出す)。→②若者が軍隊に集まる。→③戦争に向かう。→④戦争がおこると、利益を得る企業が出てくる。→⑤戦争を進めるように、マスコミ・政治に働きかける。→⑥個人のレベルでますます貧困が進む。

堤さんの提案する、私たちにできること
1.政治を動かす。
→特に地方政治 、地方マスコミ
2.情報を読む。
3.つながる

特に、1.について自分の地域の政治・マスコミを変えていくことからはじめてみたい。

A群溶連菌感染症の迅速検査の方法について

 日本外来小児科学会に、A群溶連菌に関する演題を提出しました。
 溶連菌を疑った小児に対しては、迅速検査が陰性であったとしても培養検査を実施することが推奨されています。しかしその方法について詳細な推奨はないと思われます。
1本のスワブを使用して培養と迅速を同時に実施しています。
そのため、培地に塗った後で迅速検査を実施するため、菌量が減少して、偽陰性が増加することが懸念されていました。
しかし、今回の検討によると、そんなことは無いようです。

 
【はじめに】A群溶連菌感染症を疑って迅速検査を実施する場合、迅速検査が陰性であった場合も、小児に対しては培養検査を追加することが推奨されている。当施設では、咽頭扁桃を擦過した1本のスワブを血液寒天培地に接触した後に、同一のスワブを使って迅速検査を実施している。
【目的】ⅰ)患者群と非患者群の臨床症状について比較・検討を行う。ⅱ)1本のスワブで採取した検体を使って、培養検査と迅速検査を実施した場合の、迅速検査の結果に与える影響について検討する。
【対象と方法】2009年5月~2011年4月までの2年間に、当科外来でA群溶連菌迅速検査を実施した480例を対象に、診療録から後方視的に検討した。尚、使用した迅速検査キットの感度は87.3%、特異度は95.8%である。
【結果】培養検査による陽性が124例、培養陽性・迅速陰性の症例が15例で、両検査の陽性一致率は87.9%であった。患者群は、非患者群と比較して、咽頭痛と咽頭発赤が有意に多く、扁桃の浸出物の付着が有意に少なかった。発熱、咳、頭痛、腹痛、発疹については、両群間に差はなかった。
【考察】臨床症状から溶連菌を確定することは困難であるものの、咽頭・扁桃所見が参考になる。1本のスワブを用いて迅速検査と培養検査を実施する方法は、迅速検査の結果に影響を与えることはなく、簡便で患児の負担も少なく、有用な方法と考えられた。
 
 発表する機会が与えられれば、発表後、スライドを公開したいと思います。