2011年6月7日火曜日

A群溶連菌感染症の迅速検査の方法について

 日本外来小児科学会に、A群溶連菌に関する演題を提出しました。
 溶連菌を疑った小児に対しては、迅速検査が陰性であったとしても培養検査を実施することが推奨されています。しかしその方法について詳細な推奨はないと思われます。
1本のスワブを使用して培養と迅速を同時に実施しています。
そのため、培地に塗った後で迅速検査を実施するため、菌量が減少して、偽陰性が増加することが懸念されていました。
しかし、今回の検討によると、そんなことは無いようです。

 
【はじめに】A群溶連菌感染症を疑って迅速検査を実施する場合、迅速検査が陰性であった場合も、小児に対しては培養検査を追加することが推奨されている。当施設では、咽頭扁桃を擦過した1本のスワブを血液寒天培地に接触した後に、同一のスワブを使って迅速検査を実施している。
【目的】ⅰ)患者群と非患者群の臨床症状について比較・検討を行う。ⅱ)1本のスワブで採取した検体を使って、培養検査と迅速検査を実施した場合の、迅速検査の結果に与える影響について検討する。
【対象と方法】2009年5月~2011年4月までの2年間に、当科外来でA群溶連菌迅速検査を実施した480例を対象に、診療録から後方視的に検討した。尚、使用した迅速検査キットの感度は87.3%、特異度は95.8%である。
【結果】培養検査による陽性が124例、培養陽性・迅速陰性の症例が15例で、両検査の陽性一致率は87.9%であった。患者群は、非患者群と比較して、咽頭痛と咽頭発赤が有意に多く、扁桃の浸出物の付着が有意に少なかった。発熱、咳、頭痛、腹痛、発疹については、両群間に差はなかった。
【考察】臨床症状から溶連菌を確定することは困難であるものの、咽頭・扁桃所見が参考になる。1本のスワブを用いて迅速検査と培養検査を実施する方法は、迅速検査の結果に影響を与えることはなく、簡便で患児の負担も少なく、有用な方法と考えられた。
 
 発表する機会が与えられれば、発表後、スライドを公開したいと思います。

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